幼児が持つといわれる「素朴生物学」の中核をなす生気論的因果の性質をより明細化することを目的として一連の実験をおこなった。その結果次のことが明らかになった。 (1)幼児(5〜6歳児)は、動物だけでなく植物も生存のために食べ物(水を含む)から力や元気のもとをとる、その余剰の活力で成長が生じる、という点で、動物と植物が共通性をもっており、無生物とは異なるという理解を幼児がもっている。呼吸や繁殖にくらべ、成長、摂食(水)、老死に関しては動物と植物の共通性に気づきやすいことも見いだされ、幼児のもつ素朴生物学が、摂食(水)や成長の理解を中心にして形成されていくらしいことが示唆された。 (2)食べ物から力や元気のもとを取り入れることによって病気に対する抵抗力ができるだけでなく、寿命をのばしたり、けがを直すことでさえできるという考えを幼児は持っていた。さらに不十分な摂食や新鮮な空気の欠如によって活力が低下することや体内のバランスをくずすことが、病気への抵抗力を弱め、発病につながりやすいことを4〜6歳の幼児は理解していることが明らかにされたが、同時に道徳的に悪いことをしたことも病気への抵抗力を弱めると考えていることも明らかにされた。しかし発病に対してどちらの要因がより重要かを判断させると、少なくとも5歳児では、生物学的要因をより重要だとした。4歳児ではその傾向は明瞭にはみられなかったが、風邪をひくという生物学的事象と誕生パーティへの招待という社会的事象を適用される因果的説明という観点から区別していることが明瞭に認められた。
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