本研究の目的は、心理学の初修教育において、学生に主体性を持たせて学問の意義を把握させるには、どのような方策が望ましいかを検討することにある。より、具体的には、心理学教育における初学者(1、2年生)のためのゼミナールのあり方に焦点を絞り、心理学の基礎教育のあるべき姿を調査することをめざした。その方法として、(1)心理学を専修の学科・コースとして有する国内の諸大学において、初学者向けのゼミナール(実験演習科目は除く)がどのような教育効果を目指し、どのように実践されているのかをインタビュー調査によって明らかにすること、さらに、(2)実際の教育場面での試みを通じてより効果的なゼミナールの姿を求めることとした。(1)の調査の項目としては、演習の目的、単位数(時間数)、スタイル<購読型か調査発表型か、クラス規模、担任制の有無、成績評価の基準、レジュメ作成指導、口頭発表技法の指導法、レポート作成の指導法、実地調査や面積法の指導法、TAの有無等>、必要教材、教育効果の評価などである。その結果は現在とりまとめの段階であるが、おおまかにいえば、大学ごとの個別性、多様性が浮き彫りになった。(2)の現場での調査は、東京大学で将来心理学を専修を希望する1年生を対象に、初学者向けのゼミ「心理学を知る」を開講し、ケーススタディを行なった。初学者の心理学に対するイメージや期待、彼らのもつ基礎知識が調査され、調査・発表のための教育法が検討された。
|