異なる文化へ移動する人々に対する研究はその必要性から数多くなされ成果を上げてきた。本研究では、外国人留学生と多く接触する機会を持つ日本人を対象に、関わり方の実態について明らかにすると共に、それぞれ立場からの異文化理解の深化プロセスについて、参加観察並びに意識調査を行った。対象となる人々とは、日本人学生(留学生のチューターおよびボランティアを含む)、留学生の指導教官、留学生との接触頻度が高い部門で働く大学事務職員、ホストファミリー、また留学生の子供の担任教師である。その際、留学生と日本人学生との交流の必要性から、主としてボランティアの日本人学生の事例を取り上げ、異文化理解に有効なストラテジーについて、また指導教官・ホストファミリー、担任教師以外の対象者全員に、留学生に使用する日本語について、の2側面から検討を行った。さらに、帰国直前の留学生のカルチャー・ショック、文化摩擦、滞在中のネガティブな体験を収集し、それに対する日本人の側の受け止め方の実態を質問紙調査により把握した。このような手続きを経て明らかにされた日本語の使用例や異文化理解の実例は、「異文化理解のためのハンドブック」としてまとめられ、留学生と接する機会の多い日本人への配布を予定している。
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