研究概要 |
本年度は、これまでに収集された不登校を示す症例について年齢、診断、CDI得点等の資料をもとに、登校拒否と診断される事例とうつ病と診断される事例を比較検討した。 対象とされた不登校事例は、男子31例、女子18例、合計49例である。そのうち、登校拒否は34例、うつ病圏の事例は10例、その他の神経症症状が顕著であった事例5例である。初診時の年齢は7歳から17歳に分布していた。これらの事例について、CDI得点の分析を試みた。CDIの平均得点は、対象児全体で21.8±7.23であった。各診断別に見てみると、登校拒否では20.5±6.77、うつ病圏の事例では27.0±7.53、その他の事例では19.6±5.81であった。登校拒否に比してうつ病圏の事例において有意にCDI得点が高かった。CDIは「対人的不適応感」尺度、「抗うつ中核」尺度、「自己嫌悪」尺度の3つの下位尺度から構成されているが、登校拒否とうつ病圏の事例の間に有意差の見られたのは、「抗うつ中核」尺度であり、登校拒否5.5±2.56に対して、うつ病圏の事例では、9.3±3.09であった。他の2下位尺度では2群間に有意な差は見られなかった。つまり、登校拒否とうつ病圏の事例の間に見られたCDIの有意な差は、抗うつの中核的症状からなる「抗うつ中核」尺度によるものであり、この結果は臨床的診断の妥当性を指示するものと考えられた。 さらに本年度は、名古屋大学教育学部附属中学と高校においてCDI,登校回避感情、性格傾向に関する質問紙調査を実施し、現在これらのデータを整理し、分析中である。 次年度は、さらにデータを収集するとともに、これまでの資料をまとめて、総合的な研究成果を提出する予定である。
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