本年度も昨年度に引き続き、不登校を示す事例のうちから登校拒否あるいはうつ病と診断される事例を取り出し、年齢、診断、CDI得点等の資料をもとに、登校拒否と診断される事例とうつ病と診断される事例の特徴を比較検討することを試みた。 対象は1989年から1997年の間に直接治療的にかかわった不登校事例である。そのうち、登校拒否は44名(男子29名、女子15名)、うつ病は12名(男子5名、女子7名)、合計56名(男子34名、女子22名)であった。これらの事例について、CDI得点の分析を試みた。GDIの平均得点は、登校拒否群では20.9±7.07、うつ病群では27.3±6.92、健常群では19.9±7.50であった。登校拒否群と健常群の間にはCDI得点に有意差は認められなかったが、うつ病群は登校拒否群および健常群に比して有意にCDI得点が高かった。CDIは「対人的不適応感」尺度、「抑うつ中核」尺度、「自己嫌悪」尺度の3つの下位尺度から構成されている。CDI総得点と同様に各下位尺度においても登校拒否群と健常群の間に有意差は認められなかったが、これら2群とうつ病群の間には、「抑うつ中核」尺度と「対人的不適応感」尺度で、有意差が認められた。そして、この結果は臨床的診断の妥当性を支持するものと考えられた。また、登校拒否群で身体症状を有するものは34名、有しないものが8名であったのに対し、うつ病群では身体症状を有するものが4名、有しないものが8名で登校拒否に身体症状を有するものが有意に多いという興味深い結果が得られら。 さらに、昨年度名古屋大学教育学部附属中学と高校において実施したCDI、登校回避感情、性格傾向に関する質問紙調査のデータを分析し、今後これらのデータを登校拒否群、うつ病群、健常児群について比較検討するための基礎資料を得た。そして、これらの結果を研究成果報告書として提出した。
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