本研究は、集団創造性を促進する条件について、社会心理学的観点から明らかにすることをめざした。最初に、創造的集団意思決定のプロセス・モデルを提示し、その枠組みのもとで、集団創造性の基底プロセスとして、創造的アイディアの“発想・生成"の段階に焦点を当てることを明確にした。次に、関連する先行研究をレビューして、集団過程そのものに、創造的なアイディアの発想・生成を抑制する機能があることを見いだした。続いて、抑制要因をさらに詳細に明らかにして、その克服方略を考えることが、集団創造性を促進する現実的で有効な道筋であることを指摘した。 以上の議論に基づいて、一連の実験を行った結果、集団創造性研究にとって貴重で新たな実証的知見を得た。それは、(1)メンバー間のコミュニケーションの構造化およびメンバーの等質性が、集団創造性を阻害する影響をもたらすこと、(2)多様な意見の交流は、敵意のようなネガティブな感情的葛藤よりも、創造的アイディアの閃きを刺激する知的葛藤を引き起こして、集団創造性を促進する影響をもたらすこと、(3)成果の報告先や他メンバーの知識量などの課題遂行環境に関するメタ知識は、抑制・促進の両面で重要な影響をもたらすこと等、であった。 最後に、今後の研究の展望として、第一に、集団創造性の促進のためには、グループ・エンジニアリング的アプローチと、集団過程に関する社会心理学的研究とを、有機的にリンクさせていくことが不可欠であることを指摘した。さらに第二には、異質なメンバーが相互作用したときに、敵意よりも知的葛藤の方を優勢に引き起こすのは、いかなる要因であるのか、さらに詳細な検討を行うことが、集団創造性研究にとって意味のある課題であることを指摘した。
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