研究概要 |
1.本研究初年度の平成七年度は、成人期のアイデンティティ発達に関する女性特有の問題点を検討する基礎として、まず以下の文献研究を行った。 (1)成人期のアイデンティティ発達における「個の確立」と「関係性の発達」の関連性、および「世話」の体験が女性の発達に及ぼす影響について考察した。(岡本祐子「成人期のアイデンティティ発達における『関係性』の側面について」広島大学教育学部紀要II部,1996年3月刊行予定) (2)19890年以降現在までに諸外国および我が国で発表された、(1)成人期・高齢期を対象にしたアイデンティティに関する研究、および(2)妊娠・出産、空の巣期のアイデンティティ危機など、成人女性特有の問題を取り扱ったアイデンティティ研究をすべて取り寄せ、その内容をレヴュウした。これらの文献展望は、鑪幹八郎・宮下一博・岡本祐子(共編)「アイデンティティ研究の展望」第III・IV巻(ナカニシヤ出版)の一部として、出版および出版予定である(第III巻は、1995年11月刊行;第IV巻は、1996年10月刊行予定)。 2.また、実証研究Iとして高齢女性約200名を対象に質問紙調査を実施した。文章完成法SCTによって、高齢期のアイデンティティ様態を分析したところ、いくつかの特徴的なタイプが見出され、これらのタイプは、高齢期の心理・社会的課題である「人生の統合」のレベルや、高齢期以前の心理・社会的課題の達成度において特徴的な相違が見られた。 3.平成8年度はひきつづき、実証研究IIとして面接調査を行い、女性の成人期のアイデンティティ発達・変容のプロセスと危機様態の特徴、およびそれにかかわる要因について分析・考察する計画である。
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