壺イメージ法はいくつかの壺を思い浮かべ、その中に入って中の感じを味わい、外へ出て蓋をするという手続きを骨子とするものである。この技法は既にさまざまな事例に効果が確認されているが、もっぱら臨床的研究が行われてきた。そこで、本研究では非病者(健常者)を被験者として実験的イメージ面接を行ない、その基礎的研究を行なった。実験的イメージ面接に際しては、ビデオ撮影による記録を行ない、また面接終了後はイメージ体験を把握するために、浮かんだイメージについて描画と質問紙を行ない、それらのデータを分析し、違いを検討した。 平成7年度では、イメージ面接でしばしば用いられる代表的イメージのうち「野原」、「洞窟」、「フリー・イメージ」、「壺」のイメージを指定した実験的イメージ面接を行ない、壺というイメージが他のイメージとくらべ、どのような特質を有しているかを検討した。その結果、壺はフリー・イメージと洞窟との中間的なものであることが分かった。また、壺イメージでは入れない壺が出現する場合があった。平成8年度は、心理テストによって不安の高い群と低い群とに分け、両群に壺イメージ法を実施し、イメージ体験の特徴の違いを検討した。その結果、高不安群は不快なイメージを想起しやすく、また入れない壺が低不安群よりも多く出現するなど、体験様式のレベルが低いことが明らかになった。 以上の研究から、壺イメージがどのような特徴を有し、なぜ効果的であるのか、イメージ技法や壺イメージ法でなぜ人が癒されるのかについてを総合的に考察し、「イメージ体験情報処理」理論を提出した。
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