本年度は、現実の職場集団を対象とする質問票調査を実施し、解析を始めている。 本調査の適切な対象集団として、ある製薬会社の営業職場(営業所)およびそこに勤務する営業メンバー(Medical Representer)を選定した。この集団は、顧客への効果的な情報提供を行い、業績に結びつけるために、各メンバーが個別に獲得した知識情報とスキル情報の共有、貯蔵、練り上げ、それらを営業の業務活動に活かしている。 この調査における検証する研究仮説の主なものは、次の通りである。 1 各営業所における情報処理にかかわる諸活動は、その営業所におけるドミナントな「課題についての意味づけ(フレイミング)」によって違いがみられるであろう。 2 営業所内においてみられる情報の共有、貯蔵、および活用の度合いは、(1)営業環境の変化をメンバーが認知している度合い、(2)営業活動における情報の必要性をメンバーが認識している度合い、(3)相互援助的な雰囲気が営業チーム内に存在している度合い、および(4)高い営業実績の原因を内的に帰属すること、などと強く関係しているであろう。 3 営業所内の情報活動の質と量は、管理者(営業所長)の課題意識、交流型リーダーシップ、およびミーティング運営のあり方などと、それぞれ密接に関係しているであろう。 4 営業所の業績の高さ(対目標比、対前年比、および対前期)は、その営業所における情報処理特性と強く関連しているであろう。 以上の分析を踏まえた面接調査によって、営業メンバーが所持する独自のノウハウに、どのような種類の情報が含まれ、それをどのようにして獲得しているかについて明らかにしていく。
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