研究概要 |
本研究では、集団と個人の創造性およびその源泉について、2年度にわたり検討した。 初年度は、集団による情報処理過程、特に情報の共有およびその創造的な活用について検討した。まず、これらにかかわるわが国および外国の研究知見の収集を行った。予想通り量的に少なく、この領域の研究が、社会の要請を受けて、今後に重要性を増していく種類のものであることがうかがえた。 第2に、最近急速に普及し始めている電子コミュニケーションが集団活動に与える各種のインパクトについて広範な概括と予測的議論を行った。電子コミュニケーションにかかわる従来の議論は、バラ色の効果性を喧伝し、中間管理者不要論を説くものであったり、逆にいたずらにface-to-faceの効用にこだわるものであった。新たな視点として、組織内の活動が基本的に集団・チームでなされることから、集団が行う課題の特性、必要情報の所在、および情報リッチネスに注目した。その結果、電子コミュニケーションが特に有効性を持つ課題状況は、アイディアの創出、情報収集、あるいは知的、合理的判断課題などであることが浮かび上がった。 さらに本年度は、ある大手製薬会社の全国に広がる92営業所およびそこで勤務する1,028名のMR(Medical Representative)を対象とした質問票調査によって実証的に明らかにした。従来、集団成員の持つ課題遂行意欲が、集団全体の業績と関係することが示されてきた。しかしその関係性も、成員が課題遂行に必要とされる能力や知識を獲得できていなければ成り立たないはずである。本年度は、主にこの点に関連することについて検討した。
|