集団間競争の際の個々の集団成員の動機づけの変動について分析した。4人集団2組(AとB)の追いつ追われつの競争事態を次のような実験装置に用いて設定した。 装置は8名の被験者各個人の腕相撲を行うときの腕力を同時に測定できるものである。8本のロープが天井から各被験者のブ-スの中の机の上に垂れ下がっている。ロープの先端は吊革となっている。吊革は机の上20cmのところにぶらさがっている。ロープの上方天井近くにはロードセルがつけられていて、ここで各被験者の(腕力)張力を電気信号に変換し、各個人の力の変動を測定する。各個人及び集団全体の張力の変動は各被験者のブ-ス内にあるディスプレーにリアルタイムで表示される。 8人の被験者が所定の場所に着席したあと次のような説明がなされた。この実験の目的は個人ではなく集団全員が力を合わせた場合(腕相撲の状態で)どの程度の力が出るのかを集団を対象に測定しようとするものである。用意の合図で被験者は吊革を握り、また肘を机の上に固定する。"初め"という合図とともに全力で引っ張る。"止め"の合図で被験者は力を抜き吊革から手を離す。 以下の3種類の条件が設定された。1.集団全体の加算値を集団の勝敗の基準とするとの教示がなされる条件 2.集団の中の最も強い人の値で勝敗を決定すると教示する条件 3.集団の中の最も弱い人の値を用いると教示する条件。この基準に基づいて最終的に勝利を得た集団が一人当たり500円の報酬を受け取るとの教示がなされた。ディスプレーには上記の条件操作に従って、集団Aと集団Bのそれぞれの集団の力の変動の様子が棒グラフで示された。このような競争の変動プロセスが被験者の個人の真の力の変動にいかなる影響を与えるかということについて検討した。実験の結果、集団の中の最弱者によって報酬が決定されるとする条件でパフォーマンスが最も高くなり、最強者によって報酬が決定されるとする条件でパフォーマンスが最も低くなった。
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