(1)研究計画通り平成8年度も平成7年度に引き続きボランティア・カウンセラ-養成機関の受講生を対象に(1)傷付き体験についての無記名のアンケート調査、(2)研究協力の申し出のあったものに対する集団面接、(3)および個人面接、(4)そして通常の訓練カリキュラムの中でのロール・プレイを実施した。アンケート回答数は32でうち24名から研究協力の申し出があり、実際に被験者となった者は21名である。 (2)現在これらのデータを分析中であるが、平成8年度の被験者は、平成7年度におけるよりもかなり被検者の層に幅があるとの感触がある。その理由はまずアンケートの実施の時期が養成訓練の初期の段階であったために研究の趣旨や、カウンセリングにおける傷付き体験の振り返りの重要性が十分理解されないところでの調査となり、アンケート回収率の低さと研究協力の申し出で数の低さにつながったと考えられる。そして単に数の問題だけでなく質の問題でも、傷付き体験の幅や、それをどのように受け止めているかについてもばらつきが大きくなった。平成7年度は34名の申し出の中から20名を選定したため傷付き体験についても同質性の高い被検者を選定する結果となった。そしてこのようなばらつきの大きさは集団面接場面の凝集性を弱め、調査協力後の感想にもやや否定的な見解が散見された。 (3)被験者にばらつきがあることは決して調査そのものの目的に反することではなく、むしろ傷付き体験と共感能力との対応関係をみる上ではかえって好都合ではある。それは平成9年度の今後の作業で集団、および個人面接とロール・プレイのデータの解析結果により明らかにされるが、少なくとも今後共感能力の向上を意図して集団面接的カリキュラムを組むとするならば、メンバーの同質性をいかに高めていくかが大きな課題になることが示唆されよう。
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