(1)平成9年度はこれまでに収集してきたデータの分析を進めた年度である。分析の主たる観点は集団面接で得られた資料から、傷つき体験の克服の程度を測定することと、ロール・プレイの資料から共感能力の高低を測定しその対応関係を明らかにすることである。評定の対象になったデータは、34名の被験者の73の傷つき体験と34個のロール・プレイ場面である。傷つき体験はAからEの5つのタイプ別評定を行い、共感能力についてはC.R.ロジャースらが開発したプロセス・スケールを用いて評定した。なお評定は二人の評定者が独立に行い、評定値の一致度を確認している。 (2)結果は(1)二人の評定値には十分高い一致が見られた。(2)タイプ別に共感能力の評定値の平均値の差の検定を行い、タイプAは、他のタイプB、C、Dと5%水準で有意差がみられた。このことは次のことを意味している。(3)共感能力と傷つき体験の克服過程とが関係があるという仮説が確認された。体験を肯定的に受け止めているものは(タイプA)共感能力が高く、体験が未だ生々しく感情を揺らすものであったり(タイプB)、諦め、あるいは考えないようにしている者(タイプC)、反動形成的な頑張り(タイプD)の場合には共感能力は低い。(4)以上の結果はボランティア・カウンセラ-の養成に当たって被訓練者の選別や訓練内容に関して多くの示唆を与えるものである。
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