本研究は、様々な対象に統合型HTP描画法を施行して、描かれた人間像の変化を発達的に研究することを目的とする。さらに病的サインと言われているスティック・フィギュアー記号様人間像-の出現頻度や人格の統合性との関連を明らかにする。その目的のために、1.平成7年度:健常者群の(1)幼稚園児(2)小学2〜3年生(3)小学5〜6年生(4)大学1〜2年生の各群20名にたいして、統合型HTPを施行した。2.平成8年度:健常者群の(1)中学1〜2年生(2)高校1〜2年生、臨床群の(1)精神分裂病者の各群20名に統合型HTPを実施できた。3.今後は健常者群の成人、臨床群の情緒障害児各20名に施行する予定である。4.得られた描画データをもとにデータベースの作成を行っている。また作成したデータベースによって、得られた描画を解析しているが、その際、(1)菊池らが作成したチェックリスト(統合型HTP法分析マニュアル)を用いて、人間像の分析を行っている。(2)人間像の中のスティック・フィギュアー記号用人間像-を、a)ステイィク像b)表情・装飾付きスティックc)着色シルエットd)輪郭像、に分類し、出現年齢、出現頻度を明らかにし、発達的観点からその意味を考察している。5.スティック・フィギュアー記号用人間像-の出現時期や頻度を見ると、すでに健常者群の小学校高学年から出現し、中学生にも約20%見られ、大学生でも同じ割合であることが分かった。また大学生と分裂病者とでは、分裂病者のほうが出現頻度は高いが、下位分類を見るとd)輪郭像が大学生よりも多かった。またb)表情・装飾付きは、大学生に多かったがその表情は明るく楽しいものである。一方、分裂病者の描く表情はすべての不安・恐怖の表情であった。この結果、スティック・フィギュアは必ずしも病的とは言えず、他のアイテムとの関連やコンテクストから判断する必要がある。また輪郭像が多いことは分裂病者の特徴を表しているように思われる。
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