本研究は、海外留学経験が、キャリア発達とどのように関わっているのかについて考察し、歴史文献研究および実際の調査をもとに、現代の日本においての海外留学の位置づけを明らかにしようとするものである。海外留学は現代においては、非常に広範な地域にわたっている。本研究では、明治期に特に工学分野での重要性を持っていたと考えられるドイツという地域に限定した。まず、明治期と現代の留学の意味づけを考察するために、明治期については、歴史的文献研究をおこなった。また、現代については、どのような留学の形態があるのかを実態調査し、留学の経験者にインタビューおよび、アンケート調査を実施した。本研究において得られた成果は次の通りである。 1.歴史的文献研究により、明治期ドイツへの工学留学の推移が明らかになった。 2.現代において、どのような留学形態があるのかが明らかになった。 3.現代におけるキャリア発達モデルについて、論理的文献研究から、明らかにした。 4.特に現代における留学経験、特に異文化体験が、キャリア発達や形成に及ぼす影響を明らかにした。 今後の研究については、本研究を端緒にして、ここで得られた全体的な傾向から、特に明治期の工学留学者のケース研究を進め、明治期の留学の役割について考察していくことである。さらに、留学経験者の啓発的経験としての持つ意味をキャリア発達モデルにそって考え、明治期との違いを明らかにして現代の留学の持つ意味について深めていきたい。
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