研究概要 |
最近の認知心理学の隆盛により,知的構造・情報処理に対する我々の知識は著しく増大したわけであるが,その成果が現在のところテスト理論にあまり影響を与えていないとすれば奇妙なことと言わなければなるまい.従来のテスト理論が誤っているとか時代遅れであるというわけではなくて,認知心理学の成果を取り入れたテスト理論はテスト理論を選抜・予測問題から教授過程問題に適用可能にするために,望ましい発展・新しい展望を与えると期待できよう.本研究の目的は知的行動に対する認知心理学的アプローチと最近のテスト理論を統合することであった. 方法:本研究の最大の特色は課題に対する事前認識や研究者の持つモデルを積極的にテスト理論内で利用することにある.本研究は1)新たなモデル構築・従来から提案されてきたモデル洗練化,の部分と,2)モデルの良さを実証するための調査・実験,の部分に分けられる. 1)モデル構築・モデルの洗練 本研究のアプローチでは,1)被験者モデルを仮定し,2)その仮定を統計モデルの中に直接的に組み込む,という方法論をとる.従って,被験者の情報処理プロセスをはっきりと指定することが大前提となる.具体的には,わり算の実行方略や,濃度判断課題の実行方略のモデル化をおこなった. 2)実証研究 「わり算」課題の統計モデルは完成し,8622人の児童から集めたデータを解析した.その結果,かけ算がかなりできるのに,繰り下がりのある引き算にバグがあるグループが発見された.
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