研究概要 |
本年度は人格のビッグ・ファイブ・モデルに基づくNEO-FFIを用いて,心理的依存性と人格特性との関係について検討するため調査を行った。 対象者は板橋区の老人大学「グリーン・カレッジ」の受講者とその友人,合計101名である。心理的依存性JIDIにより測定した。本スケールは情緒的依頼心,社会的自信の欠如,自律の主張の3下位尺度で構成する23項目からなる。NEO-FFIはNEO-PIの短縮版であり,神経症傾向,外向性,開放性,協調性,誠実性の5つの人格次元について測定するように作られた60項目から構成される。 神経症傾向は心理的依存性と関係の強い人格特性であることが示され,少なくとも本研究で用いたJIDIから見る限りにおいては,心理的依存性が人格的弱さと関係しているのであろう。また,外向性との負の関係も認められた。そして,古くから研究されてきたこれら2つの人格特性に続く人格の第3の軸として導入された開放性が,情緒的依頼心,社会的自信の欠如という心理的依存性を直接にあらわす指標と負の関係をもつことが注目される。開放性は経験に対してオープンであることを示す。つまり,さまざまなことにとらわれずに,自由に考えたり行動したりする人格特性と定義される。この開放性の定義から考えると,わかりやすい結果のように思われる。自律の主張は低いとはいえ,相関をもつことは,自律の主張が健康な意味での自律心を示すのでなく,防衛としての依存という定義の妥当性を裏づけているのではないだろうか。
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