今年度は、土浦市およびその周辺の博物館における戦争展示に焦点を当てて調査を行ない、博物館と地域アイデンティティの関係を考察した。 昨年度の調査から、旧土浦海軍航空隊が、土浦市の地域アイデンティティのひとつの核となっていることが明らかとなったことから、土浦市立博物館、土浦まちかど蔵、予科練記念館(阿見町)の3館を調査対象として取り上げ、それぞれにおける旧土浦海軍航空隊関係の展示を分析するとともに、それぞれの担当者および入館者へのインタビューを行なった。 3館における海軍航空隊関係の展示には大きな相違がみられた。まず土浦市立博物館には、海軍航空隊関係の展示はほとんど存在しない。土浦まちかど蔵には、ツェッペリン号、リンドバーグ関係の展示とならんで、予科練関係の展示がなされている。両者はそれぞれ、土浦の「公式の歴史」および「記憶」を代表し、一対のものとして、土浦の地域アイデンティティを表現していると考えられる。予科練記念館は、展示においても、入館者においても、ローカルな指向をもっていない。 分析結果については、研究成果報告書とは別に、『戦争と博物館』としてまとめる予定である。
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