本研究は、次の3つの課題を3年度にわたって、相互連関的に解明することであった。 1.名古屋市における定住促進政策の展開過程については、平成7年度策定の第3次名古屋市推進計画においても、重点課題のひとつとして位置づけられ、中堅所得層向け住宅政策、都市魅力の向上、高齢化・少子化対策を軸とする政策体系が展開されていることが具体的に明らかとなった。 2.こうした政策の背景にある、名古屋市の地域社会構造のマクロ的変化については、1960、70、80、90の4時点の学区別データにもとづき、因子生態学的な分析を施したところ、社会経済的地位についてセクター型、年齢構造については同心円型の形成過程が見られることが明らかとなった。形成要因としては、初期においては工業化(製造業の発展)に伴う若年労働力の流入、70年以降は、都市のサービス経済化と郊外化(公共交通手段の整備と区画整理事業)、ホワイトカラー化の進展などによるものと考えられる。若年家族層の郊外流出によって都市内部の高齢化が加速され、都市中心部から人口減少を見ていることが、定住化政策の背景にあることはほぼ確証された。 3.さらに、学区ごとの社会的連帯構造(パーソナルネットワーク)の特徴を明らかにすることが、最終的な課題として残されている。本年度は、これを明らかにすべく、各地域類型を代表する4地点を選定して、郵送法による質問紙調査を実施した。配布総数4000に対し2301の有効票を得、現在、データ・クリーニング段階にある。次年度以降は、このデータの分析を中心に、都市の地域社会構造の形成過程と公共政策との関連、および成熟段階における都市定住化政策の意味について検討を深める予定である。
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