研究概要 |
本年は初年度ということもあり,医師-患者コミュニケーションのデータ収集が主な目標であった。質的な多様性の点ではまだ不満が残るが,量的には満足のいくものであったと評価している。しかし,些少でも分析に取り掛ってみると,クリアしなければならない課題が実に多いことに気づく。例えば,(1)ビデオの動画処理には,技術的・金銭的困難以上に,TURN-TAKING等20年来定着している会話分析モデルの原則の変更を迫るところがあるのだが,どのように克服できるのか?(2)データを眺めれば眺めるほど,「間」のように会話のなかで重要な意味を持ついくつかの要素が思った以上に主観的な現象であることが分るのだが,これをどのように実証的に「客観」化するのか……等である。 したがって7年度には,残念ながらまだ発表できるほどの成果が上がっていないのだが,最終9年度には報告書をまとめる計画であり,その過程で部分的には論稿を公表する心積もりである。ただ本研究に関連するものとして,昨秋の日本社会学会の口頭発表では,-理論が主でデータについて僅かしか触れていないが-「社会問題ワークの社会学」について論じた。引き続き今年の学会では,社会問題の調査方法論に関してテーマセッションを組織する予定でいる。また,論文は、紀要等に投稿するもの以外に,96年中に世界思想社より公刊する運びになっている,好井裕明,山田富秋編の『会話分析入門(仮題)』の「医師-患者コミュニケーション」という1章を分担執筆しているところである。
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