本研究では、阪神・淡路大震災を中心に、自然災害後の被災コミュニティの復興過程を比較・分析することにより、以下のような知見が得られた。 1.都市型大規模災害においては、「社会的弱者」(高齢者・障害者や低所得層)にダメ-ジが集中し、彼らの生活再建への道筋をどうつけていくのかという点が、コミュニティの復興をめぐる重要なイシューとなっている。 2.阪神・淡路大震災では、複数の被災地域で「土地区画整理事業」や「市街地再開発事業」が導入されたが、それらの事業負担の大きさをめぐって、深刻な葛藤が続いている。現行の復興メニュー(制度)の制約が、復興過程の長期化を招く一因となっていると考えられる。 逆に、都市計画の「白地地区」では、法定事業による公的支援が得られないため、いちはやく住宅を再建できる層とそれができない層との格差が顕著な形で現れている。 3.被災コミュニティの特性(空間的特性や住民の階層的特性等)や被災の程度に応じて、各コミュニティの復興課題や復興戦略、現実の復興過程は異なったものとなっている。 また、ひとつのコミュニティの内部でも、被災住民の階層性(資産・所得を初めとする生活資源の動員力や被災程度)に応じて生活再建への展望・戦略は異なっており、それゆえコミュニティの復興ビジョンや復興戦略への対応も異なってくる。復興事業の負担の大きさをめぐる紛争も、そうした住民各層の生活再建戦略や地域再生イメージのずれと重層する形で顕在化していると考えられる。 なお、被災コミュニティは現在も復興途上にあり、今後も長いタイムスパンでの研究を続けていく必要がある。
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