研究課題/領域番号 |
07610186
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研究種目 |
一般研究(C)
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
沢田 善太郎 大阪府立大学, 総合科学部, 助教授 (90137232)
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研究分担者 |
山田 義顕 大阪府立大学, 総合科学部, 教授 (70027978)
田淵 晋也 大阪府立大学, 総合科学部, 教授 (30079115)
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キーワード | 明治文化 / 翻訳 / 異文化間コミュニケーション / 国民国家 / 官僚制 |
研究概要 |
明治初期の日本への欧米諸文化の移入の過程は英学、フランス学、ドイツ学というように分類され、アメリカは英学の一部とみなされることが多い。しかし、19世紀末のヨーロッパ、アメリカおよび日本の社会状況を考えると、アメリカはヨーロッパ諸国と区別される特徴をもち、日本人の国家観、社会観の形成に固有の影響をおよぼした。遣欧使節団が来米したときすでに岩倉の子弟がアメリカに留学していた事実が示すように、明治初期のアメリカへの留学生は少なくない。国民国家形成をへて、帝国主義段階に近づいていたヨーロッパ列強に対して、アメリカの連邦型国家と多民族社会はことなるインパクトを当時の日本人におよぼした可能性がある。現在、われわれはHenry Reeveの訳したトクヴィルの『アメリカの民主制』を重訳した肥塚龍重の『自由原論』を共同研究している。フランス人トクヴィルがヨーロッパとアメリカを比較したこの著作が、米国人の目で訳され、それをさらに当時の日本人が重訳したときに生じる二重あるいは三重の意味の異同の検討を通じて、当時の日本の社会形成における「欧米」文化の「多様」な影響を解きほぐしたい。 これとあわせて、われわれは主として、ミルの『自由論』を訳した中村正直『自由之理』(1870)と高橋正治郎訳『自由之權利』(1895)を対照し、社会科学用語の翻訳の定着の過程を検討している。社会という基本用語さえ手さぐりであった中村の訳にくらべ、高橋の訳は原文にかなり忠実で、訳語も今日のそれに近いが、bureaucracyは「有司」、「百官」と訳されるように、自由民権運動の影響下でこの言葉が今日とはことなった脈絡で理解されているなど、日本の社会科学的思考の時期による断絶と継承の過程が読みとることができる。
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