本研究の目的は、地方小都市における地域問題に対する住民の取り組みや関心の、階層構造における差異を分析することであるが、田川市と福岡市において実施した「暮らしむきと社会参加に関する調査」では、階層的な地域差がたしかに認められた。 すなわち、「中」意識や「世間並み」ということは、経済的に停滞した地方小都市においては、良質の生活や地域における比較上層を意味する。田川、福岡とも中年の低中所得層の比較下層意識が強く、とくに福岡では、収入階層を強く反映した意識・態度が存在する。 地域問題についての関心や参加度は、田川、福岡とも中間層の無関心や参加度の低さが指摘できる。これは全国的傾向であると考えられるが、全体に福岡にその傾向が強く、伝統型アノミーの意識・態度が顕著である。地域問題がより深刻というイメージの強い田川は、一般市民レベルでは地域についての意識も参加度も比較的高い。これは、階層意識ともども伝統型の意識・態度が比較的残っているためとも考えられる。 また、調査に前後して、周辺市町も含めた市民各層のインタビューを実施した。さらに、田川市においては、市民の小グループとの懇談会を継続的に実施し、このなかで調査結果の評価や意味づけについて議論を深め、この懇談会は現在も継続中である。この結果、地域イメージの住民層の意識・態度に及ぼす影響の大きさが、一つの問題としてクローズ・アップされた。 以上のように、大都市もしくは全国的なアグリゲートなデータでは多元的と考えられる社会階層、階層意識も、地域的には、ある程度一元的・固定的に住民自身に自己投影されている姿が観察されたといえるだろう。
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