前年度の調査を継続する形で、4月から岩見沢地区での面接調査を再開し、7月に終えた。最終的に、三笠地区で37名、岩見沢地区で65名の協力が得られた。転居、死亡を対象外とした回収率は、42.5%と39.2%である。データを電算機で処理できるように加工した後、研究協力者の久世淳子と共同で高齢者の社会的空間と物理的空間の広がりについて第一次の分析を行い、その結果を9月に第61回日本心理学会大会で報告した。つづいて、筆者は、主婦の誕生という視点から女性の職業経歴のケース分析を行い、11月の第70回日本社会学会大会で報告した。 報告書の作成にあたり、職業からみたライフスタイルと社会関係の広がりの特徴を把握するとともに、老年期へとつながる従来の生活履歴の意味を考察することをめざした。今回は、大正生まれを対象とする男女間比較に重点をおいた。女性の職業経歴とライフスタイルでは、70年代半ばの主婦の誕生に焦点をあて、その実態がどうであったのかを検討した。この調査は、職業経歴からみて炭鉱労働者・職員と教員を含む公務員の家族が主な対象となるように設計したが、職業階層が主婦の存在形態にどのような違いをもたらすのかについて考察することができた。また、現役時代の余暇活動を含め職業生活が老年期のライフスタイルに影響を及ぼす点について、社会関係や日常の中心的活動との対応を調べ、幅広く経歴の意味を探ることができた。さらに、対象とした地域では、高齢者の「夫婦のみ世帯」や「単独世帯」の比重が高いが、日常生活を支える社会的ネットワークについて、男女に分けてその違いを分析した。
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