本研究では、職業からみたライフスタイルと社会関係の広がりの特徴を把握するとともに、老年期へとつながる従来の生活履歴の意味を考察することをめざした。とくに今回は、職業への関与の違いが大きいいと予想される男女間比較に重点をおいた。 分析の結果、次の点が明らかになった。 (1)理論的には、70年代半ばの主婦の誕生に焦点をあて、その実態がどうであったのかを検討した。表層では主婦が主流となるが、内職型の家でできる仕事や、季節雇いのように短期間就労を組むライフスタイルがその背後には存在している。 (2)戦前の中産階級で主流であった主婦というライフスタイルは、戦後雇用者に広がることになったといえよう。主婦の誕生は、夫の職業階層、いいかえれば収入の多寡と関連している。職をもたない、本来の主婦は、収入が多いホワイトカラーで、より一般的である。しかし、炭鉱労働者や機関士などのように、大企業で働くブルーカラーもまた賃金が高く、妻が家にいる可能性があった。 (3)老年期の社会関係をみると、男性では同僚や仕事仲間との関係が会への参加という形で退職後も持続する場合がある。それはときには妻にも及んでいる。これは、男性の多くが同じ職場や職種に長くとどまるという職業経歴形成のあり方と職場の凝集性の強さを反映する。また、女性は、男性と比べて援助の関係資源をもつ人の比率が高い。また重要な人以外に行き来する人をもつ。これは女性では夫がなくなった後の新たなライフステージにおいて、社会的ネットワークの再編成が必要となる確率が高いことを示唆する。
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