本研究は、都市社会の中高年層が、どのような第一次的社会関係を基礎にしたネットワークを形成していのかを、余暇サークル活動に焦点をあてて、その活動の展開の場である都市社会の構造と関連づけて調査することを目的とするものである。典型事例として取り上げたのは、消長浮沈の激しい中で比較的歴史のある男性を中心とした料理と食文化のグループの「男子厨房に入ろう会」である。初年度では、このグループの歴史、組織形態、活動状況、抱えている問題について聞き取り調査を実施した。対象とする都市環境として東京、仙台、札幌、松本を取り上げ、次の知見を見いだした。 1.地方都市の成熟の兆候が見いだせた。東京を本部とした全国組織が解体され各支部が独立した形態で活動を行うようになった。それは活動の活性化と衰退をもたらしている。東京で最初に始まり東日本の各都市に広がったこの活動も、それぞれの地域単位での活動に収斂していった。 2.中高年層を中心としたメンバーの職業的背景の関わりの大きさが顕著に見られる。時には自営業層とサラリーマン層の問題関心や期待の対立軸となって現れている。仙台のグループでは、比較的時間の持てる自営業層がリーダーシップをとり、定年近傍のサラリーマン層がにわかに加入増を示している構図である。 3.長いもので20年近くの歴史を持ち、初期メンバーの持ち上がりと近年になっての定年年齢層の新規加入によって会のメンバーの高年齢化が進んでいる。活動の性格もメンバーの加齢とともに変容してきている。 4.料理や食文化を当初のテーマにして始まった活動も、それを基盤にしてボランティア活動などに新たな場を見いだし性格を変えつつあり、地域によって異なった動きを示している。
|