本研究は平成7年および平成8年の2年間にわたるものである。今年度は東京のなかでも外国人居住者がもっとも多い新宿区大久保地区と豊島区池袋地区におけるエスニック・ビジネスの空間的配置の確認、社会地図の作成、および自営業者層を対象とするインタビュー調査を中心に行った。このインタビューにより、エスニック・ビジネスに携わる経営者の一部にアジア諸国での滞在経験をもつ日本人経営者、中国帰国者2世、在日韓国・朝鮮人2世、3世、共同経営者としての日本人が含まれていることが明らかになった。また、その背後のネットワークの一端を掴むことができた。ここでは各エスニックごとにネットワークの形態が異なり、背後に広がるネットワークが、あるエスニック集団においては政治的な動向と緊密に結びついていること、エスニックに関わる教会であれば階層ごとに異なるネットワーク形成がみられることなどが明らかとなった。さらに今後エスニック・ネットワーク研究の進展をまって、こうした施設や装置を介した日本人との関係が明らかになるものといえる。 また、大阪あるいは荒川といった従来から在日韓国・朝鮮人が数多く暮らす地域での自営業者層に関する若干の聞き取りを行ったが、自営業者に関するデータ・ベースを入手することが困難なため、未だ全体像を捉えるには到っていない。他地域との比較をする上でも、川崎、横浜および群馬県大泉町などへのアプローチを欠かせないが、今年度は時間的な問題もあり、来年度へ持ち越しとなった。
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