本研究の目的は、東京の豊島区池袋地区および新宿区大久保地区におけるニューカマ-ズとしての外国人自営業者層の起業と事業展開、ネットワークおよび地域住民の対応を明らかにすることにある。2年来の調査により、以下の点が明らかとなった. 1.豊島区池袋地区における外国人自営業者の起業は、1988年の団塊としての大陸出身中国人の来住を契機とする。80年代初頭からの台湾系および中国帰国者家族など中国系日本人を中心にエスニック・ビジネスが展開し始めるが、いずれもニューカマ-ズを顧客対象とし、ここにニューカマ-ズ自身による起業が続いた。日本人がオーナーとして介在するケースもあるが、実質的な経営は中国系移住者たちにより担われている。 2.豊島区池袋地区の場合、イスラム系移住者たちの生活拠点としてのモスクの形成も進む。自営業者層は宗教施設の維持、管理とイスラム系移住者のネットワークを結び合う結節点をなす。ここでの宗教とビジネスとは不可分の関係にある。 3.中国系自営業者層の起業にともない、同一地域での営業活動には一定の限界が示される。過当競争は池袋周辺地域および埼玉県南部への地域的な分散、拡大を促した。中国系起業家の中には異なるエスニツクを対象とする自営業者も表れている。 4.新宿における外国人自営業者層の中心は韓国系移住者である。ここでも1980年代後半以降、ニューカマ-ズを対象とするエスニック・ビジネスが展開する。新宿区内の韓国系エスニツク・ビジネスの対象領域は広く、あらゆる生活サービスが用意される。韓国人生活世界が自律的な様相を持ち始めていることを示す。新宿にはもとより在日韓国・朝鮮人の自営業者が一定の層をなしているが、それを基盤としながらも、新たな需要に応じたエスニツク・ビジネスの展開が図られている。 4.大阪の場合、ニューカマ-ズとしての外国人自営業者層の形成はいまだあまり展開がみられない。しかし、在日韓国・朝鮮人の基盤があり、宗教関連施設および食材、メディアなどの起業がみられ、ニューカマ-ズの生活世界に影響を与え始めている。
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