研究概要 |
1993年に発足した技能実習制度は、96年3月31日現在で累計5,601人の技能実習生を認定し、アジアの開発途上国の人材育成の一環を担う制度として日本社会に定着を見せ始めた。技能実習生を受け入れる中小企業は、従来の若年労働力の代替を主たる受け入れ目的としているものの、将来に関する確実な経営見通しと、積極的な経営姿勢を持つ業界内の優良企業であり、研修生を繰り返し受け入れて、いまや企業内において研修生や実習生は不可欠な労働力となっている。その意味では、技能実習生という外国人労働力は、バブル期の人手不足を補うという臨時労働力としてではなく、若年者不足に悩む中小企業の基幹労働力として位置付けられている。したがって、こうした中小企業と技能実習生送り出し国の要請を考慮すると、技能実習制度は将来にわたって拡充していかざるを得ないだろう。日本における合法的かつ永続的な外国人単純労働者導入の制度がここに根づいたと言える。しかし当初は、単純労働者として外国人労働力を受け入れても、彼らは2年間の滞日中の研修・実習によって技能が向上し、帰国後は単純労働者から半熟練工や熟練工、あるいはホワイトカラーヘと労働市場で上昇移動が可能である。この場合の技能とは、生産技術に関する技術的技能ばかりではなく、広くその知識・技能を生み出した社会的風土を体験するという社会的技能を含められねばならない。前者の獲得が効果を見せない場合でも、後者の技能は技術的技能習得の前提として研修生・実習生すべてが何らかの段階まで習得している。この社会的技能に注目することにより、技能実習制度が、一企業の海外進出といった範囲を超えて日本の生活習慣と日本の職場慣行、日本の生産方式への理解を海外へ広げるという効果を果たしていると結論づけられる.
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