(1)いずれ近いうちに新しい小選挙区制で総選挙が行われる。現在報道各社は、選挙にあたって、どのような調査を行ない、どのような「情勢報告」をするのか、真剣に検討している。ところが政党側は従来この種の「予測報道」には神経をとがらせてきた。 フランスでは予測報道は一定期間禁止されている。しかし、予測報道は禁止すべきものなのであろうか。この点を明らかにするために、戦後の衆議院選挙について、予測報道の仕方と、実際の選挙結果とを照合することによって、予測報道の問題点を検証した。 (2)これまでに、幾つかの選挙のたびに、繰り返しこの問題に関心をもち、研究をすすめてきた。かなり多くの日本の研究者が、この問題にとりくんできている。しかしいずれも特定の選挙についての個別的研究であった。そこで本研究では、戦後の主要な選挙について、過去の資料を系統的に整理・分析し、そこに見られる問題の性質を明らかにした。 (3)日本では予測報道は以前から政治家によって繰り返し否定的に問題にされてきた。政党や候補者の側では、数多くの選挙予測調査をおこなっているのに、である。そこで新聞を中心に、新聞社の予測報道にたいする姿勢の違い、選挙がおこなわれた時の社会情勢と選挙予測報道との関係、の意味を明らかにする。それによって小選挙区制選挙における予測報道の問題点を明らかにしようとした。 (4)その結果、従来のいわゆる中選挙区制は、選挙予測報道にも助けられながら、その時期の政治に対する民意を反映しているのではないか。即ち最下位当選者と次点落選者との間の微妙な当落の変化をもたらしながら、比例代表制の要素をも含めながら民意を反映しているのではないか、という仮説が、新たに浮び上がってきた。
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