(1)平成8年10月20日、さまざまな議論を呼びながら、小選挙区比例代表並立制で総選挙が行われた。報道各社はこの選挙にあたっても世論調査を行ない、いわゆる「情勢報告」記事を掲載した。日本ではこの種の予測報道は、以前から政治家によって繰り返し否定的に問題にされ、政党側は従来からこの種の「予測報道」には神経をとがらせてきた。政党や候補者の側では、数多くの選挙予測調査をおこなっているのに、である。 フランスでは予測報道は一定期間禁止されている。しかし、選挙予測報道は禁止すべきものなのであろうか。 (2)この点を明らかにするために、戦後の衆議院選挙について、新聞を中心に、予測報道の仕方と、実際の選挙結果とを照合し、予測報道の問題点を検証しようとした。 (3)また、新聞を中心に、新聞社の予測報道にたいする姿勢の違い、選挙がおこなわれた時の社会情勢と選挙予測報道との関係を明らかにしながら、報道の問題点を明らかにしようとしてきた。 (4)その結果、選挙報道の問題点もさることながら、従来のいわゆる中選挙区制は、選挙予測報道にも助けられながら、その時期の社会情勢と、政治に対する民意を反映してきたのではないか、ということが明らかになってきた。即ち選挙予測報道は、最下位当選者と次点落選者との間に微妙な当落の変化をもたらし、少数の意見をも代表する比例代表制の要素と、多数の意見を代表する小選挙区制の要素とを合わせ持ちながら、かなりよく民意を反映し、同時に政権の安定をもたらしではないか、と思われる。
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