本研究は平成不況経済期における造船・重工企業6社の組織構造・組織文化の変化を、環境変動とそれへの適応の認知、環境問題、情報化の次元から調査した。合せて調査方法の認識論的、社会学的考察をも試みた。 戦後の産業構造の変動を4段階に分け、第IV期を高度知識集約型・資源再生型構造と見なした。またすべてにおいてグローバル基準が厳しく適用された。1970-75、1980-85、1990〜95年の経済変動の中で、企業の基本的組織形態は、本社機構をスリム化し、事業本部制を強化し、第IV期では企業集団を事業経営の単位とする戦略に変った。 平成経済への適応感は業種により肯定・否定に分かれ、顧客ニーズ・市場構造と設備投資状況の変化、情報化の高度化を認知する者が多く、社会的要因のそれは少ない。約70%がある程度の会社の変化を感じ、その中で事業戦略と組織機構の変化を意識した。前者では重点化、後者では簡素化が多い。しかし思考・行動パターンや組織文化の変化は少なく、体質・ハビテュスの深層まで変化が浸透していないことを意味する。環境問題への関心はあるが、汚染物質・廃棄物の発生抑制・削減、リサイクルと省エネの推進のレベルで、行政や産業界で取り組むべきと認識している。情報化の重要性認識は高く、多種の情報機器を使用、パソコン導入によるコミュニケーションの効果と問題点が指摘された。社外とのコミュニケーションの活性化までには至っていない。組織文化では、外部開放性より内部開放性、試行性・革新性・独自性よりも仕事場の位置確実性の認知が多く、専門プロとしてのアイデンティティ感は高いが、将来への不安を強く感じている。内部志向的体質やハビテュスが環境変動という鏡で映じ出された。ほとんどの項目で事業(本)部、職制、職種による差異が見られた。同時に調査に関わる、その過程で発生する主観性が検討された。
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