研究概要 |
1.福岡県内の市町村,2兵庫県内の市町村,3神奈川県の三圏域の老人保健福祉計画の策定について,書面による調査とインタヴュー調査をおこなった。福岡県については「北九州市」「筑後市」兵庫県では、「西宮市」,「明石市」,「加古川市」,「加西市」,「五色町」,神奈川県では「川崎市」が地域特性を踏えた特色ある計画を策定しているものと思われる。 これらに関しては,「計画自体が特色を有する」ことに加えて,策定担当者の計画についてのアイデンティティーが大きく係っているものと思われる。老人保健福祉計画の策定については,「ニーズの総量を把握すること」と,「市町村の計画策定能力」が課題となり,策定の指針やマニュアルの存在が問題となった。結果として,計画策定担当者が計画について,いかにアイデンティティーを持っているかが問われることとなった。 「県」による評価が高いものは,計画の内容自体とあわせて,策定担当者の満足度も高いことがわかった。また,計画について「満足していない」担当者については,そのことを自らの責任や能力の問題として捉えるというより,「マニュアルの存在」というような,他者の責任として捉える傾向がうかがわれた。従って,地域特性を踏えたコミュニティ・ケアを実施するためには,コミュニティ・ケアの持っている理念や普遍性を重視することとあわせて,コミュニティ・ケアの計画化から実施,そして評価に至るまで,担当者がローカル・アイデンティティーを持てるようなシステムの確保が不可欠であると思われる。 ただし,これらのことは,福岡県,兵庫県,神奈県というような,コミュニティ・ケアに力点を置いている場合にいえることであり,あわせて調査中である福岡県の周辺(佐賀県,熊本県)などについては,担当者の意識と計画の評価についてクロスできるほどの明確な関係性はうかがわれないものと思われる。
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