地域で計画策定を担当している者が、計画策定や地域特性にアイデンティティーを持てるか、否かが、「策定された計画についての満足度」と深く関係し、従って、「マニュアル」・「指針」の存在や国や県からの市町村に対する指導は、かえって、地域特性を反映した計画に結実しないのではないかという仮説の下に、「福岡県」、「佐賀県」、「熊本県」、「兵庫県」、「神奈川県」と、五県内の全市町村・関係団体につき、主に、アンケート調査を実施した。アンケート調査の結果については、(1)策定された計画についての満足度と、(2)アンケートに回答した担当者が、評価を下す際について「自己責任」という観点から回答を導き出したか、「他者責任」という観点から回答を導き出したかをクロスさせ分析した。その理由は、コミュニティーケア自体が「普遍性」と「特殊性=地域性」という二つの価値軸を有しているからである。 仮説のとおり、(1)「策定された計画についての満足度」と(2)「地域に対してのアイデンティティー」や「実感としての主体性発揮の有無」等が密接に関係していることが、結果として得られた。地域を比較すると「福岡県」と「兵庫県」に類似した傾向が見られる。 同様のことは、介護保険導入後の市町村の実施計画作成についても想像できることから、今後とも、計画づくりの「指針」や「マニュアル」と、計画づくりにおける「自由度」や「地域特性の重視」との関係が大きな問題となろう。いずれにしても、地域で具体的に計画を策定する市町村職員の「ローカルなものに対するアイデンティティーの確保」が重要な鍵を握っているものと考えられる。
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