伊達市の有珠地区は、集落性を示す代表的なウタリ社会である。しかし、伝統的な伊達一族の移住後の主とした農業開発によって、北海道でも有数の成功した開拓事業の例となっており、繁栄する中心都市とは、対照的に有珠のウタリ社会は停滞と自己解体の傾向を示すにいたっている。この地区のウタリは、他の地区のウタリ、例えば、穂別、二風谷、浦河様似などのウタリ社会の人びととは異なり、消極的になってしまっており、自分がウタリであることを隠す傾向にある。にもかかわらず、彼らは「ウタリ福祉対策」に強い関心を示し、「伝統文化の保存」を望んでおり、「アイヌ民族の文化や歴史は正しく知られていない。」と思っており、そして、半数以上の人たちは、「アイヌの人々への差別や偏見」があると思っている。社会調査(面接・質問紙法・資料集収)をとおして、ウタリ社会の福祉の問題を明らかにする。多変量解析も多用する。彼らは、ウタリ協会との連繁のもとで、イチャルパヤカムイノミを行ない、伝統文化の復活に心がけている。調査によって、新しい社会的事実が多く発見された。
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