価値観は、社会について考える者なら、誰もが考慮しなければならない鍵概念である。つまり、社会学にとっては最重要概念のひとつである。価値観に触れずに、社会学を語ることは不可能だと言っても過言ではないだろう。価値観と社会は、社会が変われば価値観も変わり、そしてその価値観がまた新たな社会を作り出すといった循環的関係にある。 いつの時代でも新しい価値観を持ち込み、社会を変化させていくのは、若者たちである。その若者たちが現在どのような価値観を持っているかについて、私は以前から継続的に調べてきている。今回は、1987年から5年おきに実施してきている「大学生の価値観研究」の第3回目の調査を行った。その結果、価値観の変化には、社会的趨勢を原因とする長期的で安定的な変化と、突発的な出来事の影響による短期的で不安定な変化があることが明らかになった。具体的に指摘できる変化は以下のようなものである。(1)男女平等化志向が進む方向でジェンダー意識が変化したこと。(2)これと関連して伝統的な性規範も解体したと言っていいような段階まで来ていること。(3)社会関心や政治関心がどんどん減退していること。(4)戦争に対する危機意識が弱まり、自衛隊などの存続を含めて社会体制の現状維持志向がさらに強まっていること。もちろん、大学を卒業してからも、価値観は変化する。そこで、今回の研究のもうひとつの焦点として、第1回目の調査時に大学生だった人々がその8年後に、どのように価値観を変化させたかについても調べた。その結果、やはり結婚と子の親となることが、価値観を変化させる大きな原因になっていることが明らかになった。しかし、20歳代後半から30歳代はじめの「新人類」と呼ばれたこの世代は、親となっても相変わらず「子ども-若者」型価値観を持ち続けている者も少なくない。
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