兵庫県下の中小企業の経営者を対象として意識調査とインタビューを実施した。 郵送による意識調査では、各経営者の簡単な経歴と自身の経営のタイプを明らかにする質問、これまでの経験のなかで重要であったと判断される具体的な意志決定、いわゆる日本的な経営がどの程度現実に行われているか、情報化の進展に対する評価、などを中心に質問した。 大半の経営者は、実際の経営が個人的な決断によるものであり、新しい発想を重視すると答えている。一方で、根回しや終身雇用などの日本的な経営が存在することも指摘している。情報化の進展には、程度の差はあれ、各経営者とも積極的に対応し、基本的には肯定的に評価している。しかし、個人的な判断が経営の中核をなすという立場において、将来を予測するような確実な情報を発見できない、という回答も多くの経営者から寄せられた。 アンケートに回答された経営者のうち数名に関して、インタビューを実施した。個別の経営の現実は、上記のようなアンケートと対応していることは事実であるが、各社の製品の製造過程、市場の特性、また企業の立地などの相違により、さまざまである。その中で、共通して明らかになったことは、社員の合意を得ることを前提にせず、とにかく新しい仕事を自ら考案あるいは受注し、その後で社員を説得するという過程である。また、経営には時間が必要であることも指摘された。 個人的な判断であることと、経営スタイルの確立には時間が必要であるということ、このような観点から意志決定に関する新しい分析枠組みを構築することが可能であろう。
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