日本の組織における意思決定の過程、特にフォーマルな集団の中での決定の過程について、新しい観点から研究を行なった。 アンケートとインタビューを通して、中小企業の経営において、その意思決定過程が経営者の個人的な判断が中心になっていることが明らかになった。合意の形成以上に、従業員に説得せざるを得ない状況があるのである。 さらに、各企業の立地や製品によって、それをめぐる決定や経営のプロセスにも大きな違いがあることも明らかになった。それに関連して、企業経営のパターンは、時間の経過の中で、具体的な製品との関係において形成されるのではないかという推測が成り立つ。モノとモノ、人間との関係によって経営のスタイルが規定されるという側面を、今後の研究のかで生かすことができるであろう。 また、情報化の親展により、企業間でコンピュータやインターネットなどを通したコミュニケーションが重要になっているが、同時に、対面的な関係も重視されている。その意味で、ファックス、CAD、コンピュータなどのモノと人間との関係を考慮に入れた視点から意思決定過程を再検討することは重要であった。しかし、経営者が確実な予測を根拠に判断したいと考えている一方で、現在のところ、大量に入手可能な情報のなかからどのように選択すればいいのかに関して当惑しているのも事実である。 従来の意味での近代社会論、日本社会論や政策決定論といった理論的側面と、エスノメソドロジーの方法に代表されるような具体的な相互作用の記述という実証的な側面を同時に含み、それらが理論的かつ実証的なひとつのモノグラフとして集約することは今後の課題である。
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