研究概要 |
平成7年度は終末ケアの基本的枠組として、第一に研究対象を明確化すること、第二に保健・医療・福祉の各領域別分野における、「終末ケア」「ターミナルケア」をキーワードとする学術論文・文献の資料収集、第三に医療分野における終末ケアの動向の考察であった。以上の3点から以下の所見を得た。1,日本の終末ケアに関する種々の研究から保健・医療・福祉に関する研究の考察では「終末ケア」「ターミナルケア」の概念規定ず必ずしも明確になっていないことが判明した。すなわち両者の専門用語の氾濫がみられ、多くの文献で用いられている実態から分析すると、(1)「終末ケア」は社会福祉の援助技術過程において固有の視点からとらえ、その対象は主に老人である。(2)「ターミナルケア」は医療・看護・保健分野等の文献で数多く引用されており、その対象は癌患者が中心であること。その主要な研究に柏木哲夫論文(1981年)が中心である。2,保健・医療・福祉の各領域別分野の文献収集では、(1)医療・看護方面の研究が福祉分野に比べ多いこと。(2)社会福祉の分野における終末ケア研究は、社会福祉方法論、社会福祉援助技術、老人福祉論、老人福祉施設処遇論の視点からの研究が主流であり極めて少ない。3,医療における終末ケア研究では、ペインコントロール、患者サイドからのConsumer Organization for Medicine & Law研究等がある。即ち、日本の終末ケア研究は、ターミナルケアは癌患者の専門的処遇が中心であり、施設・在宅居住老人を対象とした終末ケア研究は見当らない。以上の研究成果の到達点から、当初、研究2年目に予定していた、保健・医療・福祉の研究者らに対するアンケートの手法は無理があり、近年の老人福祉動向「公的介護保健」をふまえ、終末ケアの方向性を探究していきたい。
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