日本における終末ケア研究は、保健・医療・福祉の分野から数多くの優れた研究がある。本研究成果から日本における終末ケア研究は、保健・医療・福祉の分野が個々ばらばらに進められている点に大きな特徴をみることができる。医療分野における終末ケア研究では、末期患者に対するケアとキュアの両面から対象者にどう関わっていくかの研究が多い。保健分野では、死全般・死亡状況と季節の関係、死因と年齢の関係及び介護状況などに関する研究など、死亡に関する統計学的分析が多いのが主な特徴である。社会福祉の分野からは、在宅に於ける死の見取り、施設に於ける終末ケア状況、終末ケアについて職員のストレスの問題と評定尺度等の実態分析が中心である。 本研究から、医療分野の終末ケア先行研究は、「対象者にどう関わるか」の研究はかなり進んでいるのに対し、保健・福祉分野では「その周辺領域の基礎研究」が多いのが特徴である。このことは、終末ケアについてキュアに従事する医療関係者がその中心的な役割を担っており、ケアに従事するパラメディカルスタッフが二次的役割を担っている傾向がある。よって、保健・医療・福祉の領域別分野における終末ケア研究の特徴は、その研究傾向としてピラミッド型の図式ができ、最上層に医療における終末ケア研究が位置し、下部組織に精神的な面でのケアを支えている職員が位置していることが確認された。即ち、今日、保健・医療・福祉の連携が叫ばれているが、ターミナルケア(がん研究)では、その連携は機能しているが、老人の終末ケア研究では社会福祉援助技術から、死に向うクライエントにどう関わるかの研究が極めて不備であり、終末ケア基礎研究に止まっている。 本研究から、今後社会福祉援助技術の個有の視点から、対象者にどう援助するかの研究の重要性と意義が認識された。
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