研究概要 |
1.わが国では,未発達である児童の高齢者観を測定するスケールの開発を行った。Olejnic & LaRue(1981)の「高齢者観スケール」とSeefeltら(1977)のCATEスケールの中の「SD」を改良し、信頼性の高いスケールを作成した。前者は、老人や老いについての知識・認識を問う18項目の文章に2件法で答えるもの、後者は、老人のイメージを示す18形容語対(相反する形容詞)に5件法で答えるものである。これを用いた結果は、小学校低学年ほど肯定的な老人観・老人イメージを抱いていること、中学、高校に上がるほど肯定的でなくなること、とくに高齢者の身体的側面に対する否定的な見方が増えることなどである。さらに、要因分析の結果、小さい時の祖父母や高齢者とのよい交流経験が肯定的な高齢者観を形成する最も重要な要因であった。 2.そこで、低学年のうちに、偏見の少ない高齢者観の形成を助長する福祉教育を行う必要性が認識された。そのために、福祉教育の現状を把握する調査を行った。東京都全域の幼稚園、小学校、中学校から3分の1を無作為抽出し、郵送調査を実施した(有効回収票数701)。高齢者との交流プログラムを実施している幼稚園は51.8%、福祉教育プログラムを実施している小学校は50.3%、中学校は50.3%であった。幼稚園では、敬老会や運動会等の行事に招待しての交流が43.6%で多く、小学校も行事への招待の方式が66.2%で多かった。中学校では、行事への招待(42.1%)よりも生徒会やクラブによる施設訪問等の課外活動の方が69.5%で多かった。半数が実施していたが、体系だった福祉教育とはなっておらず、授業等が過密で実施できない現場の悩みが多く表明された。 3.福祉教育プログラムは、(1)副読本やビデオを使う、(2)高齢者等から体験や知識・技術を学ぶ、(3)一緒に活動して相互理解を図る、(4)高齢者や障害者を援助する体験学習などがある。5人の低学年児童に高齢者との2時間の昔の遊びと高齢者に関する3つのビデオをみるプログラムを実施して、効果をみた。我々の開発したスケールにより測定したかぎりでは、明白な効果が得られなかった。しかし、より受容的な態度が観察された。
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