1.報告書では、占領初期の教職追放=ホワイト・パ-ジが文部省の人的構成と機能の変化に与えた影響及び占領後期の教職追放=レッド・パ-ジが教員組合幹部の人的構成とその機能の変化に与えた影響を分析している。 2.占領初期の教職追放(ホワイト・パ-ジ)の実態とそれが教育行政機関の人的構成と機能に及ぼした影響については、次のことを明らかにした。 (1)教職追放が中央レベルの教育行政機関である文部省幹部の人的構成とその機能の変化に及ぼした影響を分析した。教職追放の結果、文部省の戦時中の大部分の幹部が排除され、これにかわり自由主義的傾向を有する学者、民間人が登用されることになった。このような人的構成の変化は、文部省がGHQの指導する教育民主化の機能を担保する機関へと転換することを可能とした。 (2)都道府県レベルにおける教職適格審査の実態と特徴を分析し、追放者を最小限にとどめるという審査委員会の共通した姿勢とその結果追放が1%に満たない小規模なものとなったことを明らかにした。教職追放が都道府県レベルの教育行政機関の人的構成と機能の変化に及ぼした影響の分析は今後の課題として残った。 3.CIEの反共教育政策の起点と諸段階を分析し、次いでレッド・パ-ジが教員組合の幹部構成及びその機能に与えた影響を、地方レベルでは群馬県を事例とし、中央レベルは日教組大会の役員選挙等の動向を素材に分析した。レッド・パ-ジを前後する時期に、左派から右派への幹部構成の大きな転換が地方レベルでも中央レベルでも起こっていたことが確認された。また、幹部の人的構成の変化は運動路線の変化を伴っており、GHQが唱導していた反共主義、協調主義を前面に揚げた運動路線が支配的となった。
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