本研究では、援助トータル・システムを教育援助の分析枠組みとして、2国間援助では米国、多国間援助では世界銀行、受取り国としてインドネシアを事例として取り上げ調査研究している。このように本研究は教育援助を受取り国または供与国といった単一のアクターではなく、複数のアクターによる「複合相互依存状況」のなかで分析して正確に把握しようとするものである。今年度前半は各アクターの政策決定過程に関する資料収集を中心に行った。現地調査で収集したインドネシアの資料は翻訳などを含めて資料整理している段階である。米国のUSAID(国際開発庁)と世界銀行については教育援助各担当者から資料を受領した。また、途上国と世界銀行の援助全般及び教育援助についての海外の著作物、論文も収集、整理した。後半においては、収集した資料をもとにインドネシア及び世銀についての援助政策決定過程を分析している。世銀では、教育機関建設・配置プロジェクトを事例として取り上げ、このプロジェクトが教育費関数を基に決定されていることから、教育援助政策決定過程と経済分析との関連を分析している。インドネシアについては第6次国家開発計画(REPELITA VI、1994-98)の資料を整理し、開発計画における教育開発の位置付けの分析をしている。来年度は2国間援助としての米国をその対外政策と教育援助の関連から教育援助政策決定過程を分析し、更にこれらのアクターが援助トータル・システムのなかでどのような相互作用を行って、現実に教育援助が規制・実施されているかを把握する予定である。
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