1 本年度の研究は、第1次資料を入手し、(1)教区と学区が分離し、学区が行政的に独立した団体として策定されていく過程と、(2)学区が住民の教育要求を論議しそれを学校教育に反映させていく公共性の仕組み、の全体像を整理することを主たる作業とした。これまでアンガーミュデ郡学区、ユターボク=ルッケンバルデ郡パプリッツ学区、シュレ-ジエン州教区=学区、インス-ブルク教区=学区、ミュールハウゼン教区=学区の資料を解読したところである。これによると学区策定には地域差があり、比較的法制化の整備が進行したブランデンブルクでは学校村落(シュールドルフ)と学校区(シュールアムト)が成立している。シュレ-ジエン州では教区・学区の再編が大規模に実施されている。またインス-ブルク教区=学区、ミュールハウゼン教区=学区では教区と学区が機能的に未分化である。これまで明らかになった点は、地方の行政的単位策定前史において学区策定がその単位と位置づけられ、その後学区は行政的団体化の方向をとる、ということである。 2 本年度のいま一つの課題は学区策定に関する立法的・行政的措置を法令集から検索することにあった。19世紀初頭に土地所有の変動と領主=農民関係の法的解体にともない旧来の教区=学区も再編を余儀なくされた。その再編は農業改革立法とともになされ、非常に錯綜した行政的及び立法的措置のもとで実施された。この措置については現在も整理中である。 3 本年度は研究成果を発表できなかったが、4月末日迄上越教育大学研紀要第15巻第1号に、「ドイツ近代学区制度史研究(1)-東プロイセンインス-ブルク教区=学区の事例-」(仮題)を作成する予定である。
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