本研究は、教育基本法10条1項に言うところの、不当な支配に服することなく、国民全体に対して直接に責任を負って行われる(「教育の直接責任制」)ような、国民教育の経営・管理システムを再構築するために、公教育経営の基本原理と、それを実現する具体的なシステムの在り方を探究することを基本的課題としている。 本年度は、本研究における「地域教育経営」の実践の事例検討のうち、特に、国際比較的な観点からの研究を重視し、英国におけるLocal Management of schools(略称LMS.敢えて日本語に訳すなら「地域的な学校の経営・管理」)の理論と実践を取り上げ、イギリスにおける「市場原理」の理論枠組みと、その枠組みの教育経営システムの全体構造への組み込まれ方に注目して、検討した。 イギリスの学会誌における研究論文や書物、あるいは教育行政関係者の論稿などの文献をもとに、1988年教育改革法の施行後に実際にLMSを施行した複数の地方教育当局において、LMS下における「市場原理」の適用についてどのような枠組みが組み立てられ、それが実際にはどのように運用されているのかについて、検討した。 そして、前二年度の研究成果、及び申請者のこれまでの研究蓄積をふまえて統括的なまとめの作業を行ない、それらをもとに報告書にまとめた。
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