本研究は、教育基本法10条1項に言うところの、不当な支配に服することなく、国民全体に対して直接に責任を負って行われる(「教育の直接責任制」)ような、公教育の経営・管理システムを再構築するために公教育経営の基本原理と、それを実現する具体的なシステムの在り方を探究することを基本的課題とする。 従来の教育経営学ないしは学校経営学の先行研究を「教育におけるアドミニストレーション」という視点から批判的に検討を加え、公教育の経営・管理をめぐる基礎的な理論の構造と問題点を整理した。特に、「学校の自治」論をはじめとする従来の理論枠組み・先行学説とそれをめぐる諸々の議論について総括的・批判的検討を行い、その整理の上にたって、「地域教育経営」の理論的な枠組みを提示した。 次に、「地域教育経営」実践の事例の検討を日本とイギリスについて行った。国内の事例としては、北海道・宗谷管区における地域教育経営システム、そして、国際比較の観点からの事例として、イングランドとウェールズにおけるLocal Management of Schools(略称LMS.「地域的な学校の経営・管理」)の理論と実践を取り上げ、実践の概要やその理論枠組みの特徴などを、教育経営学の視点から検討を加えた。 以上の研究の結果、教育経営の支配的実態を克服する展望として、公教育の地域的な経営・管理に関わる「地域教育経営」という枠組みが、理論的にも実践的にも可能性があるものであることを検証した。
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