研究概要 |
周辺地域と比較して「ほとんど格差になくなった同和地区」と「なお多くの格差を残している同和地区」の比較分析を通して,子どもの教育上の「格差」に関連する「地域の教育力」の内容・構造を明らかにすることを目的とした。 周辺地域と比較して「ほとんど格差になくなった同和地区」をふくむ学校(小学校・中学校)と「なお多くの格差を残している同和地区」をふくむ学校(小学校・中学校)を対象に、それぞれについて子どもの学力・生活実態調査を実施した。その結果、次の特徴がみられた。 (1)生活保護世帯、父子・母子家庭といった生活困難層の子どもの学力が低い傾向にあること。特に、同和地区の場合こうした傾向が強いこと。 (2)全体として、小学校から中学校にかけて学力の二極分化の傾向がみられること。学力が「落ち込む」要因は多様であるが、生活困難も重要な要因として働いていること。 こうした結果をふまえて、周辺地域と比較して「ほとんど格差になくなった同和地区」の住民を対象に実施した生活実態調査から、子どもの学力に反映される「地域の教育力」として、次の二つを重要な要素として抽出した。(1)住民の社会的自立の程度(就労の安定と学歴に象徴される教育程度)。(2)住民の自律的生活態度と地域における住民自治の程度。 さらに、「住民の社会的自立」が、自動的に「住民の自律的生活態度と地域における住民自治」につながるわけではなく、地域目標を明確にした「地域づくり」の実践が媒介として必要になるであろうことが仮説的に指摘しうる。
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