本研究は、周辺地域との間に「ほとんど格差のなくなった同和地区」と「なお格差を残している同和地区」を比較することによって、「地域の教育力」の内容・構造を明らかにすることを目的とした。「地域の教育力」を高めることは、残された部落問題の解決にとって中心的な課題である。 研究の前提として、「地域の教育力」の内容(層)について、次の四つの層を仮説的に設定した。 第一層 地域社会・地域環境のもつ形成力 第二層 大人自身の生活と活動のもつ形成力 第三層 子どものための大人の目的的・意識的な活動のもつ教育力 第四層 子ども自身の自治的・集団的活動のもつ教育力 「なお格差を残している同和地区」の場合は、主として第二層(大人の生活・労働)に課題が残されている。すなわち、生活困難(親の不安定就労・低学歴)が、子どもの教育に直接的に影響しているのである。 「ほとんど格差のなくなった同和地区」の場合は、生活困難層が基本的には克服され、多様な形で「地域の教育力」が発揮されている。ただし、生活困難の克服(住民の社会的自立)が、自動的に住民自治や子育て運動に発展していくわけではない。運動を進める主体が形成され、「地域づくり」が目標におかれることが、発展の条件となる。すなわち、第二層から第三層への発展は、主として「地域づくり」の運動によって促進されるということである。
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