研究実施初年度の平成7年度においては、本研究計画で設定した諸課題のうち、「高等教育レベルにおける社会教育専門職養成に関する調査」を行った。本調査は、理論モデル構築に不可欠の基礎的資料の収集・分析の段階にあたり、我が国の高等教育機関における社会教育専門職養成の実態把握をめざすものである。 調査は、概ね次のような内容・方法によって実施した。 1.「社会教育主事(補)資格の授与を行う課程を有する大学等」に関する調査 2.「生涯学習指導者養成」に係る課程(コース)を有する大学、特にいわゆる「ゼロ免=新課程」として発足させた教育系大学・学部について、専門教育における「資格付与」の意義、位置づけ等の調査 3.「社会教育実習」を実施する社会教育施設等に関する調査 平成7年度に計画した調査については、そのデータ・ベース化を図った。その集計結果を本研究の目的に照らして検討すると、概ね次のような問題点、課題が明らかとなった。 1.「社会教育主事(補)資格」の授与にかかる教育課程については、大幅な単位の読み替えが行われており、十分な専門職養成カリキュラムが実現されているとは言い難い。 2.教育系大学・学部における「生涯学習指導者養成コース」の設置は、高等教育改革の進捗の過程で一層増加する傾向を示している。しかし一方、これらの課程の設置および維持にいたる動機は、学校教員の需給関係の逼迫にあることが多く、必ずしも十分な「生涯学習指導者養成」機能の検討がなされているとは言い難い。 3.「社会教育実習」に関するプログラムについては、少数の機関において組織的に受け入れる傾向があるが、通常、若干名の学生の受け入れにとどまっている場合が多い。以上の傾向から、「生涯学習指導者養成」の理論的検討と教育課程モデルの構築が一層重要であり、今後の課題が明確となった。
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