本研究は、幕末期国学の教育史的意義について、国学の受容と普及の視点から実証的に考察することを目的とし、とくに次の2つの課題の解明を目指した。 1.平田篤胤の国学における民衆教化思想の特質 2.幕末における国学の地域的な受容と普及の実態及びその意義。 研究は平成7年度と8年度の2か年計画で行うものとし、初年度は当該地へ出張しての必要な研究史料の収集を主要な作業とした。当初の段階で調査し収集する予定にした史料の主なものは次の通りであった。 1.平田篤胤の国学における民衆教化思想に関する史料 2.幕末期における平田篤胤の国学の受容と普及に関する史料。 このうち、1については既刊の『新修平田篤胤全集』を用いることとし、実質的な史料収集は2に関する史料を中心に行ってきた。地域における国学の受容と普及の様相を明らかにするためには、まずはじめに国学受容者層の中心に位置づく人物に関する史料を次の2つの視点から収集する必要があった。 第1には、本人自身によって書き残された日記、歌集、意見書、書簡など。第2には、地域への国学普及や民衆教化などの実践的活動に関する史料である。これまでに実施した静岡、浜松、名古屋、伊勢及び新潟等への出張調査研究を通して、『遠州国学者関係書簡集(甲・乙)』『高林家史料』『小泉蒼軒日録』『山本金木日記』『飯田昌秀日記』などを収集した。これらの史料をもとにした本格的な分析と考察ならびに研究のまとめは平成8年度の課題である。
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